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vol.8【応・健康】鍼の動かし方で変わる補瀉の効果 〜 伝統技術の奥深さ

  • 執筆者の写真: - 鍼仙人 - 高山 昌大
    - 鍼仙人 - 高山 昌大
  • 3月20日
  • 読了時間: 6分

更新日:3月26日

鍼灸治療において、「補瀉(ほしゃ)」は施術の根幹をなす概念です。補法は不足した気を補い、瀉法は余分な気を排出することで、身体のバランスを整えます。その調整には、鍼の刺し方や動かし方が重要な役割を果たします。

本記事では、鍼の動かし方による補瀉の違いを解説し、実際の施術でどのように応用されるのかを探っていきます。



1. 刺入速度による補瀉の違い


補法:ゆっくりと刺入 ゆっくりとした刺入は、患者の体が刺激を受け入れやすく、気を逃さずに充実させる効果があります。虚弱体質や慢性的な疲労のある人に適しています。

瀉法:素早く刺入 素早く刺入することで、停滞していた気が動き、滞りを解消します。特に、実証(体力があり、症状が強い状態)や急性の痛み、熱症状の緩和に効果的です。



2. 抜鍼の仕方で気の流れを変える


補法:ゆっくり抜く ゆっくりと鍼を抜くことで、気の流れを安定させ、補う作用が強くなります。抜いた後、皮膚を軽く押さえることで、気を留める効果も期待できます。

瀉法:素早く抜く 勢いよく抜鍼することで、停滞していた邪気を解放し、滞りを改善します。抜鍼後に鍼穴を開いたままにすることで、悪い気が外に抜けやすくなります。



3. 捻転(ねんてん)による補瀉の調整


補法:時計回りに回す 鍼を時計回りにゆっくりと捻ることで、気が集まりやすくなり、体内の陽気を高める作用があります。

瀉法:反時計回りに回す 反時計回りに捻ることで、余分な気を散らし、熱や炎症を抑える効果があります。特に、実熱症状(熱感や赤みを伴う痛み)に有効です。



4. 鍼の上下運動「雀啄術(じゃくたくじゅつ)」


補法:軽くゆっくりと上下に動かす 柔らかく小刻みに動かすことで、気を送り込み、経絡の流れを促します。穏やかに気を補充し、虚弱体質の人にも適した方法です。

瀉法:強く速く上下に動かす 速く力強く動かすことで、停滞していた気を活性化させ、不要なエネルギーを取り除きます。肩こりや筋肉のこわばり、炎症のある部位に効果的です。



5. 経絡の流れを意識した「迎随補瀉(げいずいほしゃ)」


補法:経絡の流れに沿わせる 鍼を刺す方向を経絡の流れに合わせることで、気の巡りをスムーズにし、補う作用が高まります。

瀉法:経絡の流れに逆らわせる 流れに逆行する方向に鍼を進めることで、滞りを解消し、気の排出を促します。



6. 呼吸と連動させる施術法


補法:吸気時に刺入し、呼気時に抜く 吸気とともに気を取り込み、身体にエネルギーを補給します。

瀉法:呼気時に刺入し、吸気時に抜く 呼気とともに不要な気を体外に排出し、デトックス効果を高めます。



7. 鍼の留め方で変わる作用


補法:長時間の留鍼 15分以上の留鍼は、気をしっかりと補う作用を持ちます。慢性疾患や冷え症の患者に適しています。

瀉法:短時間の留鍼 すぐに抜鍼することで、余分な気を排出し、過剰な熱を逃がすことができます。実証の患者や急性の痛みに有効です。


鍼の動かし方ひとつで変わる治療効果


鍼灸における補瀉の技法は、患者の体質や症状に合わせた繊細な調整が求められます。単に「刺す」「抜く」だけではなく、その動作ひとつひとつに意味があり、治療の効果を大きく左右します。

患者の状態を見極め、適切な補瀉の技法を選択することで、より高い治療効果を発揮できるのが鍼灸の奥深さ。施術者の手技と経験が試される部分でもあります。


鍼は科学であり、芸術である


鍼灸における補瀉の技法は、患者の体質や症状に合わせた繊細な調整が求められます。単に「刺す」「抜く」だけではなく、その動作ひとつひとつに意味があり、治療の効果を大きく左右します。

まるで名匠が筆を操るように、鍼を用いて身体のバランスを整える――それは、まさに芸術の領域。施術者の技術と感性が融合し、患者の健康を描き出していきます。

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『鍼仙人』院長 高山 昌大


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