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vol.85【素問】奇経八脈・経別の治療活用〜本幹以外の“裏ルート”で整える〜

  • 執筆者の写真: - 鍼仙人 - 高山 昌大
    - 鍼仙人 - 高山 昌大
  • 3月24日
  • 読了時間: 5分

更新日:3月27日


東洋医学において、私たちが日常的に扱う「経絡」は、主に12の正経(せいけい)と呼ばれるライン。しかし古典には、これらとは異なる“裏ルート”=補助循環”として、奇経八脈(きけいはちみゃく)と経別(けいべつ)の存在が記されています。


これらは、


✔️ 正経だけではカバーしきれない複雑な症状

✔️ 慢性化した機能異常や、左右差・上下差・深層の異変


に対し、“経絡の裏側から”アプローチするための重要な鍵です。



【1. 奇経八脈とは?〜エネルギーの“バイパス・統合回路”〜】


奇経八脈は、正経とは異なる8つの特別な流れ。その主な役割は、全身の気血バランスの統合・調整・貯蔵・再配分です。


名称

主な役割

代表的な配穴

督脈(とくみゃく)

陽の統合・脊柱・中枢神経系

百会・長強

任脈(にんみゃく)

陰の統合・内臓・生殖器

関元・中極・気海

衝脈(しょうみゃく)

血の海・月経・全身の栄養供給

公孫+内関

帯脈(たいみゃく)

身体を水平に締める・骨盤安定

足臨泣+外関

陽蹻脈(ようきょうみゃく)

陽の動作・姿勢制御

崑崙+申脈

陰蹻脈(いんきょうみゃく)

陰の安定・睡眠・内在化

照海+列欠

陽維脈(よういみゃく)

陽経の調整・体温・免疫

外関+陽交

陰維脈(いんいみゃく)

陰経の調整・感情・ホルモン

内関+陰郄


☯️ 鍼仙人の一言:「奇経八脈は、12正経の“余剰エネルギー”の倉庫。特に自律神経やホルモンの乱れに対し、流れのバランサーとして極めて有効。」


【2. 奇経配穴の“八総穴”とは?】


奇経八脈は、その活性化のために「2つの経絡をセットで刺激」する必要があります。それを成立させるツボのペアが、古典で伝えられる八総穴(はっそうけつ)です。


奇経

八総穴ペア

衝脈 + 陰維脈

公孫 + 内関

陽蹻脈 + 陽維脈

崑崙 + 外関

陰蹻脈 + 任脈

照海 + 列欠

帯脈 + 陽維脈

足臨泣 + 外関


✅ これらは慢性疾患・多臓器連関・婦人科系・睡眠・情緒不安などに特に活躍します。



【3. 経別とは?〜深層の“裏経絡”で病をコントロールする〜】


経別とは、12正経から分岐した“裏ルート”。主に身体の深部(臓腑)や頭部、精神系に症状があるときに活用します。


特徴

説明

正経が病邪を抑えきれない時、補助的に働く

「別道以助之」と古典に記載(霊枢)

陰経と陽経をつなぎ、臓腑と頭部を結ぶ

例:腎経別は膀胱とつながり脳へ届く

経別は陰陽ペアをつなぎ、正経以上の深層治療が可能

特に瘀血・腫瘍・慢性疼痛・精神疾患などに対応


☯️ 鍼仙人の応用例:顔面神経麻痺や耳鳴りなど「頭部の片側症状」が強い場合、正経だけではなく、「経別+奇経」で裏から脳神経系を整える戦略が有効。

【4. 鍼仙人式・奇経&経別の使い分け方】


状態

アプローチ

使用例

自律神経失調・情緒不安

陰蹻脈・任脈・衝脈

照海+列欠、内関+公孫

婦人科・月経トラブル

衝脈・任脈・陰維脈

公孫+内関、関元+気海

姿勢異常・側湾・歩行異常

陽蹻脈・帯脈

崑崙+申脈、足臨泣+外関

頭部・精神の慢性疾患

経別(肝・腎・心包)+督脈

太衝・太渓・神門+百会・長強

片側麻痺・耳鳴り・顔面痛

経別(胃・胆・小腸)

足三里・外丘・支正+局所刺鍼


【まとめ:“裏の流れ”を整えることで、表の症状が動き出す】


  • 奇経八脈は「気血の統合・調整・補助」システム

  • 経別は「深層・頭部・精神」へのアプローチライン

  • どちらも「正経で届かない・整理できない症状」を、裏から支える存在


鍼灸とは、「表にある症状を、裏の流れで整える医術」。流派やテクニックに関係なく、“どこから整えるべきか”の眼を持つことこそ、真の東洋医学の力です。



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『鍼仙人』院長 高山 昌大施術歴16年/87,000人以上の施術実績。プロアスリートや著名人の施術経験も豊富。鍼師・灸師・柔道整復師・機能訓練士・登録販売者・調理師など、多岐にわたる国家資格を保有。鍼灸・柔整・構造医学・東洋医学をはじめとする幅広い知識と手技を融合。「施術は科学であり、芸術である」を理念に、心身の真の調和を追求。



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