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vol.78【素問】虚と実の見極め方〜補う・瀉す・通す、その診断と技法〜

  • 執筆者の写真: - 鍼仙人 - 高山 昌大
    - 鍼仙人 - 高山 昌大
  • 3月24日
  • 読了時間: 5分

更新日:3月27日

東洋医学を学び・実践する上で避けて通れない概念――それが「虚(きょ)」と「実(じつ)」。

このふたつのバランスをどう見極め、どこを補い、どこを瀉し、どこを通すか?

それこそが鍼灸の“生命線”とも言える診断・治療の核心です。

素問では、“虚すればこれを補い、実すればこれを瀉す”といった記述が繰り返し登場しますが、実際の臨床では「どっちが虚で、どこが実か?」という判断はとても難しい。

今回は、虚実の本質を見抜くための視点と技術を整理し、施術にどう活かすかを深掘りしていきます。


【1. 虚と実とは何か?】

分類

内容

イメージ

足りない・弱っている・動かない

“枯れている”

溜まっている・過剰・塞がっている

“詰まっている”


虚は「不足」、実は「過剰・停滞・亢進」。ただし、それは単なる“量”ではなく、“働きのバランス”の問題です。


例:


  • 肝気鬱結 → 実(滞りすぎ)

  • 肝血虚 → 虚(栄養不足)

  • 肝実+脾虚 → 怒りやすく胃がもたれる(実が虚を攻撃)



【2. 虚と実をどう診るか?四診の応用】



🔹 望診

  • 顔色が白く艶がない → 虚証

  • 顔が赤く充血、怒り顔 → 実証

  • 舌:淡く歯痕あり → 気血虚

  • 舌:紫暗・苔厚 → 瘀血や湿熱の実証


🔹 聞診

  • 声が小さく、弱々しい → 気虚・肺虚

  • 大声・怒声・喉詰まり → 肝実・痰火


🔹 問診

  • 疲れやすい・無気力 → 虚

  • 苛立ち・膨満感・重だるさ → 実


🔹 切診(脈・腹)

  • 脈が細く弱い → 虚

  • 脈が弦・滑・沈実 → 実

  • 腹部:柔らかく力がない → 虚

  • 腹部:硬結・抵抗・充満感 → 実



【3. 「補・瀉・通」の3原則】


✅ 補(ほ):足りないものを補う

  • 気虚 → 補気(足三里・中脘・脾兪)

  • 血虚 → 補血・養血(肝兪・血海・三陰交)

  • 腎精不足 → 補腎(太渓・命門・関元)


✅ 瀉(しゃ):余剰・停滞を取り除く

  • 肝鬱気滞 → 瀉肝(太衝・行間)

  • 瘀血 → 活血化瘀(膈兪・委中+鍼通電)

  • 痰湿 → 祛痰・燥湿(陰陵泉・豊隆)


✅ 通(つう):滞りを通す・調和を促す

  • 肩こり・ぎっくり腰などの局所実 → 阿是穴・経筋治療

  • 自律神経の乱れ → 督脈・任脈の調整(百会・神門・内関)

  • 経絡の気血停滞 → 経絡走行に沿って流れを促す



☯️ 鍼仙人のポイント「補えば治る」「瀉せば楽になる」ではない。本質は“どこを通すか?”という“気のルート”の設計。


【4. 鍼仙人の診断プロセス】


  1. まずは虚の有無を探る → 足りない?弱ってる?本人がそれを自覚しているか?

  2. 次に実の場所と性質を特定する → どこに詰まりがある?その実が他に悪影響を及ぼしていないか?

  3. 「通す」ことで両者をつなげる → 補う+瀉す+通す=“動きの再設計”



【5. ありがちな失敗パターンとその回避】


  • 虚証に瀉法 → 体力低下、めまい、不眠

  • 実証に補法 → 熱がこもり、症状悪化

  • 通すだけで終わる → 一時的な緩和に留まり、根本改善しない


☯️ 解決策:虚実の“主従”を見極め、「補×瀉×通」の三位一体戦略で治療を構成。


【まとめ:虚実を読む目は、気のバランスを見る力】


  • 虚=足りない、実=過剰・詰まり

  • 虚実は同時に存在することが多い(虚実挟雑証)

  • 診断の精度は、「どこをどう補い・瀉し・通すか」を導く


施術とは、まさに「気の工学」。そのバランスを見極める“眼”と、それを動かす“手”こそが、鍼灸家の最大の武器です。



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東洋医学の知恵を込めた、心に触れるやさしいケアをお届けします。



『鍼仙人』院長 高山 昌大施術歴16年/87,000人以上の施術実績。プロアスリートや著名人の施術経験も豊富。鍼師・灸師・柔道整復師・機能訓練士・登録販売者・調理師など、多岐にわたる国家資格を保有。鍼灸・柔整・構造医学・東洋医学をはじめとする幅広い知識と手技を融合。「施術は科学であり、芸術である」を理念に、心身の真の調和を追求。



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