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vol.173【霊枢】舌診・腹診と五臓のつながり〜身体の“表”に現れる“内なる氣”〜

  • 執筆者の写真: - 鍼仙人 - 高山 昌大
    - 鍼仙人 - 高山 昌大
  • 3月28日
  • 読了時間: 6分

「なんとなくお腹が張る」「舌がいつも白っぽい気がする」──そんな小さなサインこそ、五臓からの“氣の通信”かもしれない。

東洋医学では、体表に現れる兆候を“内臓の鏡”として捉える。『霊枢』は、舌・腹といった“外にある診断器”を通じて、五臓六腑の氣の状態を立体的に診る方法を示してくれている。

今回は、鍼仙人の臨床目線で、“舌”と“腹”が語る内臓の真実に迫っていこう。



【1. 舌診は“氣血津液のスクリーン”である】


『霊枢・本臓篇』より:


「氣血の盈虚は、舌に現る」

舌は、五臓六腑の氣血津液の状態が“映し出される場所”。色・形・苔・潤い・動き──あらゆる情報が、“氣のコンディション”を語ってくれる。


所見

意味

淡白舌

氣血虚・寒証・脾腎虚

紅舌

陽盛・熱証・心肝の実熱

紫舌

瘀血・氣滞・寒凝血瘀

腫大舌

水湿停滞・脾虚・氣鬱

縁に歯痕

脾虚・氣虚・浮腫傾向

苔が厚い

食滞・湿熱・外邪侵入

苔が剥げる

陰虚・胃陰傷・氣虚


鍼仙人の格言:


「舌は氣のスクリーン。映し出されるのは、五臓の“心の声”である。」


【2. 腹診は“氣の集積地”を感じる術】


『霊枢・通天篇』より:


「腹者、五臓の府なり」

腹は、氣が溜まり、集まり、巡る場所。そこに触れることで、五臓の力・氣の偏り・情緒の滞りが如実に表れてくる。


部位

臓腑

異常反応の例

心下

心・胃

緊張・冷え・動悸

臍上

胃・脾

腹満・食滞・胃弱

臍下

腎・膀胱

冷感・力が入らない・頻尿

左季肋

硬結・張り・ストレス反応

右季肋

胆・肝

苦悶・気逆・怒りの痕跡

中脘〜関元

中焦・下焦

ガス・硬結・虚の響き


鍼仙人の診立て:


「腹は氣の“集会所”。どこに集まり、どこに滞っているか。それを感じる手は、氣を診る眼に勝る。」


【3. 鍼仙人式・舌と腹で“氣の地図”を描く方法】


舌で氣の“質と層”を見る→ 表面:苔の厚さ=外邪→ 中層:舌の色=氣血→ 深層:舌質・形=臓腑・精神状態


腹で氣の“分布と動き”を診る→ 弾力・硬さ・冷温・抵抗感などから氣の動向を読む


舌×腹を組み合わせ、“五臓の氣の相関”を立体的に描く→ 舌:肝の紅+腹:左季肋の張り=肝氣鬱結・火旺→ 舌:淡+腹:脾の虚寒=脾氣虚・寒湿


鍼仙人の視点:


「舌と腹は、“氣の双眼鏡”。前と下から氣を覗けば、全体が浮かび上がる。」


【4. 舌腹診で導く治療の焦点】


◎ 舌:苔白厚/淡白/歯痕 → 補脾+除湿(足三里・脾兪・三陰交)

◎ 舌:紅+黄苔+腹:肝部緊張 → 瀉肝火+通導(太衝・行間・内関)

◎ 舌:乾+裂紋+腹:腎部虚冷 → 補腎陰+温補法(太谿・命門・関元)


鍼仙人の診立て:


「症状は語らずとも、舌と腹は正直だ。氣のバランスシートを読むように、丁寧に、静かに、氣の構図を整えよ。」


【5. 🔚まとめ:“表に現れた内臓の氣”を聴く術】


東洋医学の診察とは、見えないものを“映す”、触れられないものを“感じる”技術。

舌と腹、それぞれが語る氣の声を拾い上げ、全身の氣を再構築していく。


鍼仙人はこう結ぶ:


「氣は語らぬ。だが、舌が話し、腹が告げている。それに耳を澄ます術者だけが、氣に届く鍼を打てる。」



📘次回は【霊枢シリーズ】vol.174「虚実・寒熱・表裏・陰陽で治療方針を立てる」について解説していきます。あらゆる東洋医学の判断軸“八綱弁証”を、鍼仙人流に立体的に読み解きます。


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『鍼仙人』院長 高山 昌大

施術歴16年/87,000人以上の施術実績。

プロアスリートや著名人の施術経験も豊富。

鍼師・灸師・柔道整復師・機能訓練士・登録販売者・調理師など、多岐にわたる国家資格を保有。氣の“映し鏡”としての身体を丁寧に読み解き、五臓の声を受け取る医術を実践しています。


🟡典拠(霊枢より):

・『霊枢・本臓篇』

・『霊枢・通天篇』

・『霊枢・営衛生会篇』






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