vol.158【霊枢】虚実・寒熱・表裏・陰陽で治療方針を立てる〜氣のバランスを“4つの軸”で捉える〜

氣は、常に動き、変化している。その動きの“ズレ”や“過不足”が、症状として現れる。

では──そのズレをどう読み、どう戻すのか？

東洋医学は、氣の状態を捉えるために、4つの診断軸を持っている。それが、虚実・寒熱・表裏・陰陽。

『霊枢』においても、これらの概念は治療設計の中核をなす。今回は鍼仙人の視点から、氣の座標軸ともいえる4つの診断法則をひも解こう。

【1. 虚実：氣の“量”を診る軸】

虚（きょ）＝氣の不足・弱り・冷え・沈静
実（じつ）＝氣の過剰・滞り・炎症・興奮

■ 氣が足りない → 補う（補法）

■ 氣が過剰 → 引く（瀉法）

症状で言えば──

・虚：疲労感・息切れ・冷え・萎縮・実：痛み・腫れ・イライラ・緊張

鍼仙人はこう語る：

「氣は多くても少なくても“乱れ”。足りなければ満たし、溢れれば鎮める。それが、氣の礼儀である。」

【2. 寒熱：氣の“性質”を診る軸】

寒（かん）＝冷え・陰性・収縮・動きが遅い
熱（ねつ）＝炎症・陽性・拡張・動きが速い

■ 寒には温める

■ 熱には冷ます

たとえば──

・寒証：顔色白い・軟便・手足冷たい・脈遅・熱証：のぼせ・口渇・便秘・脈数

氣は、性質によっても乱れる。寒の氣は“静の病”、熱の氣は“動の病”とも言える。

鍼仙人の診立て：

「氣は温度を持つ。氣が冷えれば人は沈み、氣が熱すぎれば人は燃える。」

【3. 表裏：氣の“深さ”を診る軸】

表（ひょう）＝皮膚・筋・経絡など外層の不調
裏（り）＝臓腑・骨・深部に起こる異常

■ 表には軽く散らす

■ 裏には深く整える

・表証：寒気・頭痛・軽い関節痛など・裏証：腹痛・内臓機能低下・慢性化など

これが“表裏転化”することもあり、氣の深さと戦う知恵が必要になる。

鍼仙人は言う：

「氣の不調が、どこまで入り込んでいるか？それを見極めるのが“氣の深度計”である。」

【4. 陰陽：氣の“本質”を診る軸】

陰＝静・冷・内・質的側面
陽＝動・熱・外・機能的側面

この陰陽のバランスが崩れると、病が生まれる。

陽虚 → 冷え・倦怠・朝の不調
陰虚 → ほてり・乾燥・午後の不調
陰陽ともに不足 → 慢性疾患・老化現象

陰陽は氣の“性格”でもあり、“命の動態”でもある。

鍼仙人はこう残す：

「陰陽とは、氣の呼吸。吸って陰、吐いて陽。氣はその“間”に生きている。」

【5. 🔚まとめ：“氣の座標”を持つ者だけが、道を誤らない】

虚実・寒熱・表裏・陰陽──この4つの軸を使えば、氣の状態を「現在地」として把握できる。

これこそ、氣の“診断座標系”。患者の氣が「どこにいて、どうなっていて、どこに向かうべきか」を示してくれる。

鍼仙人はこう結ぶ：

「地図なき治療は迷路である。氣の座標を持てば、施術は“道”になる。」

📘次回は【霊枢シリーズ】vol.159「五臓別の治療戦略：肝虚・脾虚・腎虚をどう診るか」について解説していきます。氣の座標をどう応用するか？臓腑別に診立てと施術のリアルをお届けします！

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