vol.155【霊枢】病邪の伝変ルートとは？〜内から外へ、外から内へ〜

「病は気から」とはよく言われる。だがその“氣”が、どこから侵入し、どのように拡がり、そしてどう退いていくのか──この「病邪の伝変（でんぺん）」こそ、東洋医学が誇るダイナミックな病理観である。

『霊枢』では、氣の動きに準じて、邪氣が表層から深層へ／深層から表層へと“動く”さまを明確に描いている。今回は、鍼仙人の視点で、この病の進行と回復のルート設計図を解き明かしていこう。

【1. 病邪の侵入ルート：外邪はまず“表”から入る】

東洋医学では、六淫（風・寒・暑・湿・燥・火）などの外邪は、まず体表・経絡・皮膚・鼻・口などから侵入する。

風邪：首・背中の風門から
寒邪：足元・腰から
暑邪：体温調整系から
湿邪：関節・消化器から

これが表証（ひょうしょう）の段階。この時点で追い出せれば、病はすぐに回復する。

鍼仙人はこう語る：

「邪氣は“すき間”から入る。だがそのすき間は、多くの場合“氣の緩み”がつくっている。」

【2. 伝変とは何か？〜邪氣の“奥への進行”と“外への排出”〜】

伝変とは、病邪が層を越えて移動する現象。

表から裏へ → 表証から裏証へ進行（例：風邪→肺炎）
浅から深へ → 経絡→臓腑へ侵入
気分→血分→津液→骨髄へ と深く進むことも

逆に、治療が成功すると──

裏から表へ
深から浅へ
慢性から急性へと“戻る”反応が起きる

これは現代医学でいう好転反応やデトックス現象ともつながる。

鍼仙人の言葉：

「病は内へ内へと潜る。治癒とは、邪氣を“出せる身体”にすることだ。」

【3. 鍼仙人式：伝変を診る“5つの視点”】

発病部位の変化→ 肩から背中、背中から腹部へ移るなどの“ルート移動”を観察
時間経過とともに変わる症状→ 鼻水→咳→下痢など、“邪氣の道筋”を読む
表層の症状消失後に現れる深部症状→ 解熱後のだるさ、咳の残りなどは“伝変”のサイン
逆に、深部症状から軽い表層症状へ移る場合→ 慢性関節痛→皮膚の発疹など＝回復に向かう好転
患者の“氣の動き”を診る→ 脈・皮膚・表情・言葉の変化で氣の層を読む

【4. 治療の原則：“氣の階層”に逆らうな】

邪氣が侵入した層に応じて、治療の“階層”も変える必要がある。

表層の邪氣 → 経絡・表のツボ（風門・合谷など）で対応
中層の邪氣 → 経筋・筋膜操作（委中・肩井など）
深層の邪氣 → 臓腑を補瀉（中脘・関元・腎兪など）

鍼仙人はこう残している：

「邪氣は、氣の層に宿る。ならば、鍼もその層に届かねばならぬ。」

【5. 🔚まとめ：病は“動く”──だから治療も“動き”で捉える】

病は“静”ではない。氣の乱れに乗じて、邪氣が体内を動きながら居場所を変える。

だからこそ、鍼灸師は静的な症状だけを診ず、“氣の流れ”というダイナミズムを捉えて施術設計すべきである。

鍼仙人はこう結ぶ：

「病が動くなら、治療もまた“動きの芸術”であれ。」

📘次回は【霊枢シリーズ】vol.156「脈診とは何か？〜手首の奥にある“生き様”〜」について解説していきます。氣の流れを読むとは、脈を読むこと──“鍼仙人式・脈診の哲学”をお届けします。

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『鍼仙人』院長　高山昌大

施術歴16年／87,000人以上の施術実績。

プロアスリートや著名人の施術経験も豊富。

鍼師・灸師・柔道整復師・機能訓練士・登録販売者・調理師など、多岐にわたる国家資格を保有。鍼灸・構造医学・東洋哲学を融合し、“氣の動き”に応じた治療を追求しています。

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