vol.107【素問】素問から読み解く自律神経調整— 陰陽のリズムが整えば、心と体は自然とほどけていく —
- - 鍼仙人 - 高山 昌大
- 3月25日
- 読了時間: 6分
更新日：3月27日
「疲れているのに眠れない」「動悸・息苦しさ・めまい・気分の浮き沈み…」――これらの不調の背景には、自律神経の乱れがあることが多くあります。
現代医学では交感神経・副交感神経と説明されますが、東洋医学にはそれに相当する考え方が、数千年前から存在していました。
それが、陰陽・気血の調和、臓腑の統合、そして「神（しん）」の安定。本記事では『素問』の視点をベースに、自律神経失調とその調整法を深く掘り下げていきます。
【1. 自律神経失調＝陰陽の失調】
東洋医学では、自律神経の働きは「陰陽のバランス」によって説明されます。
西洋医学 | 東洋医学（対応） |
交感神経（緊張・戦闘） | 陽（活動・熱・上昇） |
副交感神経（休息・回復） | 陰（静養・冷・下降） |
つまり――交感神経の昂りは「陽過多」副交感神経が働かないのは「陰虚」や「気滞」などの状態と考えます。
☯️ 鍼仙人の観点：
自律神経の乱れとは、“陰陽の呼吸”が合っていない状態。治療とは、このリズムを取り戻すことに他ならない。
【2. 五臓と自律神経の関係】
五臓の調和こそが、自律神経の安定の土台になります。
臓腑 | 自律神経との関係 | 不調の兆候 |
肝 | 自律神経のコントロールセンター | イライラ・のぼせ・生理不順 |
心 | 精神の安定・循環 | 動悸・不安・焦燥感 |
脾 | 消化力と氣の生成 | 倦怠感・やる気の低下 |
肺 | 呼吸とリズムの調整 | 息苦しさ・不眠 |
腎 | 体力・ホルモン・深部の安定力 | 朝のだるさ・焦燥・不安定感 |
🪡 鍼灸では、これらの臓腑機能を整えることで、自律神経の働きを“間接的に、根本から”立て直します。
【3. 『素問』にみる心身の調整法】
🟡『素問』では、自律神経的な状態に関する記述が多くあります。
《上古天真論》：「恬淡虚無、真気従之」→ 欲望・刺激を抑えることが正気を保つ
《陰陽応象大論》：「陰平陽秘、精神乃治」→ 陰陽のバランスが精神の安定を生む
《生気通天論》：「怒傷肝、喜傷心、思傷脾、悲傷肺、恐傷腎」→ 感情と五臓の連動
これらはすべて、「氣のリズム」と「情緒」「臓腑」のバランスが、自律神経そのものを構成するという思想に基づいています。
☯️ 鍼仙人の捉え方：
自律神経とは、古典で言う“心身の調律”。整えるのは神経ではなく、“生きるリズム”である。
【4. 鍼灸による自律神経調整アプローチ】
🪡 施術ポイント：
肝気の疏泄：太衝・行間・内関
心神の安定：神門・心兪・百会・印堂
脾胃の補気：足三里・中脘・脾兪
腎の補陰・補精：太渓・腎兪・照海・関元
肺気の整調：尺沢・肺兪・太淵・膻中
🌿 特に「百会〜印堂」や「内関〜神門」など、神経反射と氣のバランスを調整するツボの組み合わせが効果的。
🧘♀️ また、施術中の呼吸誘導や静かな環境も、副交感神経を引き出す大切な要素です。
【5. 養生とセルフケアも“自律神経調整”の柱】
施術だけでなく、日々の陰陽バランスを保つ養生がとても大切です。
朝日を浴び、リズムある生活
適度な運動と深い呼吸
夜はスマホを手放し、“静”を取り戻す
温めと冷やしすぎのバランス
感情を抑えすぎず、流す
☯️ 鍼仙人の視点：
自律神経を整えるとは、“自然に還る”ということ。鍼灸はその“氣の帰り道”を示す灯台である。
🔚まとめ：リズムが整えば、心も身体も還ってくる
自律神経とは、目に見えない“生き方のリズム”。
だからこそ、・臓腑の調整・氣の循環・感情の受容――それらすべてが、本当の自律神経調整なのです。
「氣の流れ」と「陰陽の秩序」が整えば、症状は自然にほどけていく。それが『素問』に貫かれた哲学です。
次回は「素問的視点でみる不妊と妊活」について解説していきます。“生命の芽を育む”という視点で、東洋医学が不妊にどう向き合ってきたか、古典の叡智を紐解いていきます。
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『鍼仙人』院長 高山 昌大
施術歴16年／87,000人以上の施術実績。
プロアスリートや著名人の施術経験も豊富。
鍼師・灸師・柔道整復師・機能訓練士・登録販売者・調理師など、多岐にわたる国家資格を保有。鍼灸・柔整・構造医学・東洋医学をはじめとする幅広い知識と手技を融合。
「施術は科学であり、芸術である」を理念に、心身の真の調和を追求。
🟡 典拠（古典より）：
《素問・陰陽応象大論》：「陰平陽秘、精神乃治」
《素問・生気通天論》：「順四時而調其気」
《素問・上古天真論》：「恬淡虚無、真気従之、精神内守、病安従来」
《霊枢・本神篇》：「五臓安定、神明乃存」
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