vol.220【難経二十五難】五臓の氣はどこで交わる？〜“會”の概念と中焦の秘密〜
- - 鍼仙人 - 高山 昌大
- 3月31日
- 読了時間: 5分
東洋医学の本質は、“氣の流れ”にある。
しかし、その氣はただ巡るのではなく、ある場所で交わり、結び合い、再び散っていく。
その「交わりの場」こそが──**“會（え）”**である。
難経二十五難では、この「氣の會」について語られる。それは、五臓の氣が出会い、交わり、融合する中心であり、まさに“氣のハブ”と呼ぶべき存在だ。
本稿では、五臓の氣が交差する場所「中焦」と「會」について、その機能・構造・臨床的意味を深掘りしていく。
【1. “會”とは何か？氣が交わる場所】
難経では、氣の“會（え）”について以下のように述べられる：
「五臓之氣，皆会於中」
つまり、五臓から発する氣は一度、中焦（胃脘部）に集まり、そこから全身へと分配されるという。
これは現代で言うところの「腹腔神経叢」や「腸間膜循環系」など、生理学的な氣血の分配システムとも一致する。
中焦は単なる通路ではなく、氣と血、臓腑と脈、意識と感覚が交差する“中心”なのだ。
【2. 中焦は氣の“変換所”】
中焦（みぞおち周辺）は、氣の運搬だけでなく、「氣の質を変える」役割も担う。
飲食物 → 水穀の精微（営氣）へ
臓腑の情報 → 感情・意識・脈へ
つまり、物質から氣へ、氣から感情へと、あらゆる変換がこの“會”の場で起きている。
ここが滞ると：
消化不良・胃の重さ
やる気の低下・意欲減退
全身のだるさ・氣の虚症
氣の根本が“出会えていない”状態になるのだ。
【3. 鍼灸で“會”を開く】
中焦の氣を整えるには、以下のアプローチが有効：
主な経穴：
中脘・建里・気海 → 中焦の氣を巡らせる
足三里・脾兪・胃兪 → 氣の源泉を補う
膻中・章門・肝兪 → 感情と氣の連携を調整
特に中脘×脾兪×気海の組み合わせは、中焦の“氣のダム”を開放し、五臓の氣を再びひとつに繋げる鍵となる。
☯️鍼仙人の哲学：
中焦とは、“心と腹が交わる場所”である。上（頭・精神）と、下（腹・本能）を繋ぐ回路。鍼灸は、この中心に火を灯し、錆びついた氣の流路を再び光らせる技である。
【4. 鍼仙人としてのまとめ】
氣の“會”をひらくこと──それは、身体の中心に秩序を取り戻すこと。
だからこそ鍼仙人はこう考える：
「氣が集まり、交わり、再び広がる。その中心に“調和”が宿る」
🔚まとめ
“會”は氣の十字路。迷い込んだ氣も、そこで再び道を見つける。
今日から活かせる一言：氣が交わるとき、調和が生まれる。
📘次回予告
次回は、vol.221【難経二十六難】「氣の“多少”はどこで測る？〜診断と脈の深さ〜」
氣の“質”と“量”をどう診るのか？臨床に不可欠な氣診の技法に迫ります。
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“氣が交わるとき、調和が生まれる”
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『鍼仙人』院長 高山 昌大施術歴16年／87,000人以上の施術実績。鍼師・灸師・柔道整復師・機能訓練士・登録販売者・調理師など多数の国家資格を保有。「施術は科学であり、芸術である」を理念に、氣血の流れを整え、心身の統合を導く。
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『難経』第二十五難／『素問・六節蔵象論』／『霊枢・通天篇』
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