vol.284【傷寒論】陽明病の氣象：熱の内攻と実証の見極め
- - 鍼仙人 - 高山 昌大
- 4月4日
- 読了時間: 4分
氣が内にこもる──そのとき、身体は“戦いの熱”を帯びはじめる。
陽明病とは、太陽病の次のステージにあたる、熱実証の代表格。 しかしこの「熱」とは単なる発熱ではない。氣が過剰に集まり、外に出られず、内で燃え続けることで起こる“氣の閉塞と鬱熱”の状態である。
今回は、陽明病の本質とその氣象、そして鍼灸でどう応じるかを紐解いていく。
【1. 陽明病とは？──熱の渦に閉じ込められた氣】
陽明病は、傷寒論では「大熱・大渇・大汗・大便秘」という“四大証候”で語られる。
内にこもった氣が熱化し、強い発熱や顔面紅潮を引き起こす
津液が枯れて喉が渇く（陽明経の燥熱）
汗は出ていても、邪熱が抜けきらない（氣が詰まっている）
腸内に熱がこもることで便秘や腹満が起こる
つまり、陽明病とは「氣がこもり、流れを失った」状態であり、その熱は“外への逃げ場を失った氣の叫び”なのだ。
【2. 陽明病に現れる“氣のサイン”】
氣が内攻すると、身体は様々なサインを出す：
舌：乾燥し、黄苔や焦げたような苔がつく
脈：洪大・滑・数（熱実のサイン）
顔：目が充血し、のぼせ、表情が強張る
また、汗が出ているのに熱が下がらない場合は、「氣のルートが塞がっている」と考えられる。氣の出口（口・鼻・腸管）が詰まり、熱が循環できずこもっている状態だ。
【3. 鍼灸でどう陽明病を扱うか？】
陽明病は“開けて流す”が基本。
合谷・曲池・内庭など、陽明経の経穴を用いて氣を巡らせる
大椎・天枢・足三里などで熱と停滞を抜く
腸の氣が詰まっているときは腹部の按鍼や指圧を活用
ただし、過剰な瀉法や急な刺激は氣を消耗させるため、 “閉塞の解除”と“氣の循環”をセットで意識することが重要である。
【4. 陽明の熱は“氣の声”である】
陽明病における熱は、邪熱というより“氣の出口を求める圧力”である。
それは、氣が進む方向を失ったときに発する“うっ滞熱”
それは、津液が失われ、内にこもる“枯れた熱”
だからこそ、鍼灸師が観るべきは単なる体温ではなく、 「氣はどこで止まり、どこへ行こうとしているか？」 という氣象の読み解きである。
☯️ 鍼仙人は語りかける：
熱に惑わされるな。見るべきは、熱の“動き”──つまり氣の流れだ。 こもった氣は叫ぶ。静かに、その声を聴ける術者であれ。
🔚まとめ：
陽明病は、氣が内にこもり熱を帯びた状態
舌・脈・発汗・便秘などに氣の詰まりが現れる
鍼灸では“開く・巡らせる・流す”が原則
🎯今日から活かせる一言：
発熱の奥に、“行き場を失った氣”が隠れていないか？ それを探そう。
📘次回予告：
次回は「陽明経と胃・大腸の氣の読み方」──経絡構造と症状をどう結びつけるか？を深掘りしていきます。
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『鍼仙人』院長 高山 昌大
施術歴16年／87,000人以上の施術実績。
プロアスリートや著名人の施術経験も豊富。
鍼師・灸師・柔道整復師・機能訓練士・登録販売者・調理師など、多岐にわたる国家資格を保有。
氣脈走査術、経絡調律法、頭項導引鍼、外邪遮断刺鍼──太陽経を操るための臨床術を日々研磨している。
🟡典拠：『傷寒論』
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