vol.292【傷寒論】厥陰病の氣象：氣が逆流し、陰陽が錯綜する“臨界点”
- - 鍼仙人 - 高山 昌大
- 4月4日
- 読了時間: 4分
六経分類における最深部、最終段階──それが「厥陰病」。
ここでは、氣の流れが逆転し、陰陽のバランスが臨界を超えて錯綜する。 つまり、氣が制御不能になる病態である。
今回は、陰陽の反転と氣の逆流をキーワードに、厥陰病の氣象を鍼灸的視点から読み解いていく。
【1. 厥陰とは“陰の極”にして“陽への転化点”】
厥陰は「陰の極み」でありながら、 そこから陽へと転ずる“分岐点”でもある。
陰が極まり、氣が内に閉じる
同時に、そこから反転して熱が立ち上がる
▶️現れる症状：
四肢の冷え（厥冷）
吐瀉（冷えと熱が交錯）
上熱下寒（頭が熱く、下半身は冷たい）
渇して水を欲するが、飲めばすぐ吐く など
まさに、陰陽・虚実が混在した氣の乱戦状態である。
【2. 厥陰病の氣象的特徴】
陰陽の流れが交錯して逆走
虚熱と実寒が同居し、氣の混乱が起こる
情緒も乱れやすく、興奮と倦怠が交互に現れる
この状態では、脈は沈細・弦急となり、舌は赤い苔の中央剥離や乾燥など複雑な所見がみられる。つまり、“氣がどこにも定まっていない”というのが厥陰病の本質である。
【3. 鍼灸で氣の方向性を整える】
太衝・大敦：肝経の鬱熱を抜き、氣の上衝を鎮める
中極・気海・関元：下寒を温め、氣の柱を安定させる
内関・太渓・三陰交：上下をつなぎ、氣を内に引き戻す
行間・太白：氣のリズムを滑らかにする
ここで大事なのは、氣を“正しい方向”に導くこと。 抑えるでも、補うでもなく、「調律する」ことが必要になる。
【4. 臨床での読み取りのポイント】
自律神経の乱れ、PMS、不安定な情緒の波
発作的な冷え・過食・拒食・気分の乱高下
胃腸症状と精神症状がセットで出ることが多い
「どちらかが主」というより、 “すべてが一度に起きている”ような印象──それが厥陰病の氣象である。
☯️ 鍼仙人は語りかける：
厥陰の氣は、制御を超えた“混沌”だ。 その中に潜むリズムを見つけ、流れを整える。それが術者の仕事である。
🔚まとめ：
厥陰病は氣が逆流し、陰陽が錯綜する状態
上熱下寒・吐瀉・冷えと熱の交互出現が特徴
鍼灸では方向性の調律が重要
🎯今日から活かせる一言：
混乱の中に秩序を聴き取れ。それが“氣の調律”の真髄である。
📘次回予告：
次回は「厥陰経と氣のリズム」──氣の上下・出入りの調和点を探ります。
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『鍼仙人』院長 高山 昌大
施術歴16年／87,000人以上の施術実績。
プロアスリートや著名人の施術経験も豊富。 鍼師・灸師・柔道整復師・機能訓練士・登録販売者・調理師など、多岐にわたる国家資格を保有。 氣脈走査術、経絡調律法、頭項導引鍼、外邪遮断刺鍼──太陽経を操るための臨床術を日々研磨している。
施術は科学であり、芸術である。 氣は触れ、響き、流れる──その一手が世界を変える。
🟡典拠：『傷寒論』
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